
エージェンティックコマース:AIが商品を選ぶ時代、韓国で売るブランドは何をすべきか
これまで買い物客は、検索窓に商品名を入れて結果をスクロールしていました。AIがそれを変えつつあります。今では「来週のマラソン用のランニングシューズを150ドル以内で探して」と頼めば、AIエージェントが検索・比較し、許可があれば注文まで行います。これをエージェンティックコマース(Agentic Commerce)と呼びます。
2026年10月14日、大韓商工会議所(KCCI)は流通ニュースレター『Retail Talk』第125号で、米国と欧州の小売企業がAIをどう販売に使っているかを特集しました。AIと消費者行動を研究するノースカロライナ大学グリーンズボロ校のファン・ジヨン(Jiyoung Hwang)教授へのインタビューも載っています。内容が長いため、ここでは韓国で販売する海外ブランドに関係する部分だけを取り上げます。
要点: AIショッピングエージェントは検索結果の一覧を見せません。薦めるのは1〜5個の商品です。その中に入るには、買い物客が買う場所と言語で、完全で正確、しかも読みやすい商品情報が必要です。韓国では、主にCoupang上の韓国語の商品データと韓国語の商品詳細ページがそれにあたります。
チャットボットからショッピングエージェントへ
ニュースレターは4つの段階を示しています。段階が進むほど、AIが買い物の多くを引き受けます。
| 段階 | AIがすること | 依頼の例 |
|---|---|---|
| 生成AI | 質問に答え、文章や画像を作る | 「人気のランニングシューズのスタイルは?」 |
| AIアシスタント | 商品を探し、比べ、薦める | 「100ドル以下の学生向けランニングシューズを探して」 |
| AIエージェント | 状況や購入履歴を理解し、自分で判断して動く | 「自分に合うランニングシューズを探して」 |
| エージェンティックコマース | 決めた範囲の中で探し、比べ、購入まで行う | 「来週のマラソン用のシューズを150ドル以内で買って」 |
流れを示しているのがAmazonです。2024年にショッピングアシスタント「Rufus」、2025年4月にはAIが他ブランドのサイトで代わりに購入する「Buy for Me」を始めました。その後、設定した価格になると自動で注文する「Auto-Buy」も加えています。2026年5月にはRufusとAlexa+を「Alexa for Shopping」に統合しました。Amazonによると、2026年第2四半期のアクティブユーザーは前年の約2倍です。
市場はどこまで大きくなるか
まだ誰にも分からず、予測にも大きな幅があります。ニュースレターが挙げた数字は次の通りです。
| 出典 | 2030年の予測 |
|---|---|
| McKinsey | AIエージェント経由の世界のB2C商品取引が3〜5兆ドル |
| Accenture | 約3.1兆ドル |
| Deloitte | AIが間接的に影響する取引を含め最大17.5兆ドル |
| Planet Retail RNG | EC売上の31%がAIの影響を受ける(2025年は0.5%) |
幅が大きいのは、各社が測っているものが違うためです。大事なのはもっと具体的な点です。ニュースレターは、エージェンティックコマースをECに取って代わるものではなく、モバイルコマースやソーシャルコマースと同じEC内の新しい経路として位置づけています。買い物客はこれからもマーケットプレイスで買います。そこにAI経由でたどり着く人が増える、ということです。
「棚」が一気に短くなる
ブランドにとって最も大きな変化はここです。店舗では棚の30〜100個の商品を比べます。オンラインでは1回の検索で数千個が並び、1ページ目に入るかどうかが売上を大きく左右します。AIエージェントはそれを1〜5個に絞ります。

その短いリストに入らなければ、買い物客の目には触れません。そのためニュースレターは、SEOに加えてGEO(Generative Engine Optimization、生成AIエンジン最適化)が必要だとしています。
| SEO | GEO | |
|---|---|---|
| 目的 | 検索結果の上位に表示される | AIの回答や推薦リストに入る |
| 対象 | Google、Naver、マーケットプレイス内検索 | ChatGPT、Gemini、Perplexity、マーケットプレイスのAIアシスタント |
| 方法 | キーワード、コンテンツ、サイト構造 | 構造化された商品データ、AIが読める情報、信頼できる外部コンテンツ |
| 指標 | 順位とクリック | AIに薦められる頻度と正確さ |
AIに「選ばせる」ことは増えても、「払わせる」のはまだ先
AIは探すことと比べることが得意です。一方で、最後の購入までAIに任せる人はまだ多くありません。
- 米国: NIQによると、2026年9月時点で米国の消費者の51%が直近1か月の買い物で何らかのAIツールを使いました。AIの商品推薦を使った人は20%、AIショッピングアシスタントは16%です。
- 欧州: 英・仏・独の消費者を対象にしたMcKinseyの調査では、38%が商品の調査や購入判断にAIを使っていました。ただし47%は、繰り返し買う商品をAIに自動で買わせることに抵抗があると答えています。
- WalmartとChatGPT: WalmartはChatGPT内で直接決済する方式を約20万点の商品で試しましたが、購入転換率は自社サイトの約3分の1でした。その後、ChatGPTで商品を見つけ、購入はWalmart自身のAIアシスタント「Sparky」が引き継ぐ形に切り替えました。OpenAIも2026年3月、ChatGPT内での決済から商品の検索・比較へと重点を移しています。
ブランドにとっての教訓はシンプルです。候補を決めるのはAIでも、購入はまだ多くの場合、販売サイトの商品ページで決まる。そのページがきちんと仕事をする必要があります。
最初にAIに任されるのはどんな買い物か
1月のNRF 2026で、小売テック企業のRoktは、AIがどこまで関わるかで買い物を分類しました。ニュースレターはそれを4つに整理しています。

- 日常の繰り返し購入(食品、日用品、常備薬):検索から購入までAIが担う可能性があります。
- 好みが重要な購入(衣料、靴、健康、家電):AIが候補を絞り、買い物客が選びます。
- 重要度の高い購入(自動車、高級品、教育):AIが調べ、買い物客が決めます。
- 体験型の消費(旅行、美容サービス、チケット):選ぶこと自体が楽しみなので、AIは選択肢を整理する役です。
消耗品を売るなら、AIが再注文する商品になることが大切です。ファッション、家電、ビューティーなら、候補に入り、さらに商品詳細ページで勝つことが大切です。
先行する小売企業の取り組み
ニュースレターから、各社が公表した数字とともにいくつか紹介します。
- Walmartによると、AIアシスタント「Sparky」を使う顧客の平均注文額は、使わない顧客より約35%高くなっています。WalmartはChatGPTやGoogle Geminiにも自社商品をつなぎ、自社アプリ以外のAIからも買えるようにしています。
- 欧州のファッションプラットフォームZalandoは、マーケティングコンテンツの約90%を生成AIで作っていると発表しました。1年前はほぼゼロでした。1本に6〜8週間かかっていた制作は数日に短縮され、市場ごとのローカライズも現実的になりました。AIによるサイズ提案で、昨年はサイズが原因の返品を8%以上減らしています。
- Lowe'sによると、オンラインでAIアドバイザー「Mylow」を使った顧客の購入転換率は、使わない顧客の3倍です。
商品情報を短くしすぎることへの注意
ファン教授の研究は、ひとつの注意点を示しています。多くの通販サイトは、AIで何千件ものレビューを数語のキーワードにまとめています。教授の研究では、要約を短くしすぎると、内容は理解できても情報が頭に入りにくくなり、安心して購入を決める気持ちも下がりました。教授の考えを短くまとめれば、買い物客が求めているのは最短の情報ではなく、読みやすく、それでいて判断に必要なことが入った情報だ、ということです。
もうひとつの発見は、AIが自分の状況をよく理解していると感じるほど、AIへの信頼と選択への満足が高まるという点です。この効果は高価な商品より手頃な商品で強く表れました。
韓国で売るブランドにとっての意味
ニュースレターの事例は米国と欧州のものです。韓国のマーケットプレイスは独自のペースで動き、ここでは時期の予測はしません。ただ、準備すべきことは同じで、それは韓国のマーケットプレイス検索が今すでに評価していることでもあります。
- 韓国語の商品データを完全に。 サイズ、素材、成分、対応機種、型番、KCマークなどの認証情報まで、すべての項目を埋めます。AIは読めて絞り込める情報しか薦められません。Amazonのタイトルを訳しただけで項目が空のままでは、AIは判断材料を持てません。
- 疑問に答える韓国語の商品詳細ページ。 AIから買い物客を引き継いだあと、購入を決めるのは商品詳細ページ(상세페이지)です。ファン教授の指摘はここにも当てはまります。読みやすく、しかし薄くしないことです。
- 本物のレビューと安定した評価。 レビューはAIが商品を判断する主な材料のひとつです。積み上げるには時間がかかるので、早く始めましょう。
- マーケットプレイスの外でも情報をそろえる。 GEOでは信頼できる外部コンテンツも評価されます。ブランドサイト、韓国語のコンテンツ、報道が、商品ページと同じ事実を伝えているようにします。
- カテゴリーに合わせた計画。 消耗品なら、再注文しやすくし在庫を切らさないこと。好みが重要な商品なら、画像、サイズ情報、比較ポイントに力を入れます。
Kontacticができること
ここで挙げたことの多くは商品登録まわりの仕事で、私たちがCoupangで毎日行っている仕事です。
- 韓国向け商品詳細ページ — 御社の手元にある素材から、モバイル中心の韓国語Coupang商品詳細ページを制作します。韓国向け商品詳細ページ(PDP)について
- Direct — Coupang越境EC運営代行 — 御社名義のCoupang越境ストアを当社が運営代行として運営し、商品ページの最適化、Coupang広告、韓国語の電話CSを担います。米国・欧州・日本・中国本土・香港から出荷するブランドが対象です。Directについて
- Blaze — 自社韓国法人のフルマネージド運営 — 御社の韓国法人で、Coupangをはじめ韓国の各チャネルの運営を、商品登録、コンテンツ、成長マーケティングまで含めて担います。Blazeについて
小さく始めて広げることも、最初から本格的に始めることもできます。どちらでも、AI時代の出発点は商品データと商品詳細ページです。
よくある質問
エージェンティックコマースとは何ですか?
AIエージェントが、買い物客の決めた範囲の中で商品を探し、比べ、購入まで行う買い物のことです。商品を薦めるだけで購入は買い物客に任せるAIアシスタントより、一歩進んだ形です。
GEOとは何ですか?
生成AIエンジン最適化のことで、AIツールが回答や推薦に自社商品を含めるよう商品情報を整えることです。SEOは検索結果の上位を目指し、GEOはAIが薦める数少ない商品の1つになることを目指します。
韓国の消費者はすでにAIエージェントで買い物をしていますか?
ニュースレターは米国と欧州を扱っており、韓国の数字はないため、ここでは示しません。韓国でもすでに当てはまるのは、マーケットプレイスの検索が完全で構造化された商品データに頼っているという点で、これはAIエージェントが必要とするデータと同じです。
SEOはもう重要ではないのですか?
いいえ。今も多くの買い物客は検索しています。ニュースレターもエージェンティックコマースをEC内の新しい経路と位置づけています。良い商品データは両方に効きます。
原文はどこで読めますか?
『Retail Talk』は大韓商工会議所が発行する無料のニュースレター(韓国語)です。この記事は2026年10月14日の第125号を要約し、海外ブランドの視点から当社の見方を加えたものです。数字はニュースレターとそこで引用された各社の発表によります。
執筆者について
15年以上の越境EC経験を持つ、韓国とグローバル双方のEC実務家チームです。CEOのIsaac Leeは、KOTRA認定コンサルタントであり、ソウル市および韓国関税庁の公式講師を務めています。私たちは日々、海外ブランドの韓国市場進出を実行しており、このブログでは現場で得た学びを記録しています。
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